荻窪(杉並)には戦前、戦後を通して多くの文化人が住んでいました。阿佐ヶ谷の文士村に影響された作家をはじめ絵画、能楽師や作曲家、作詞家などその存在は多岐にわたります。こうした、知識人の作った環境が天沼に住む人々の誇りでもあり郷土愛に通じるものです。
河盛好蔵 (かわもり よしぞう)
◆大阪・堺市生まれ。京大仏文科卒業後、「ベル・エポック(良き時代)」のフランスに2年半留学。◆モラリスト(人間研究家)の文学者を研究した。戦後は文芸誌「新潮」の顧問や東京教育大学などの教壇に立ちながら筆を振るった。◆コクトー、バレリー、モーロワなどフランスの近現代文学の研究、わかりやすい紹介に努め、「フランス文壇史」(読売文学賞)、「パリの憂愁─ボードレールとその時代」(大仏次郎賞)が代表作。◆「文学空談」「井伏鱒二随聞」など人間への好奇心あふれた評論でも知られた。◆70年に日本芸術院会員。88年、文化勲章を受章した。◆明るく開放的な人柄で“Bクラス”をもって自ら任じ、フランス仕込みのエスプリと良識が生み出す「人とつきあう法」などの啓もう的エッセーは多くの愛読者を得た。◆89年に脳こうそくで倒れたが、97年に「藤村のパリ」を10年がかりで完成。◆95歳で母校京都大学の文学博士号を授与され、また最高齢で2度目の読売文学賞も受賞した。2000年天沼にて永眠。